大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(く)10号 決定

被告人 山崎誠作

〔抄 録〕

本件訴訟記録を精査すれば、被告人は、「昭和三一年五月上旬頃午前零時頃情交の目的で八日市場市飯倉二七一番地の一片岡かん方居宅雨戸を明けて同家屋内に侵入したものである。」との被疑事実をもつて同年一二月二五日午前一一時二五分逮捕状の執行を受け、同日八日市場簡易裁判所裁判官飯島重治により前同様の被疑事実に関し刑訴法第六〇条第一項第二号に定める事由があるものとして勾留状を発せられ、同日午後三時二〇分八日市場拘置支所において、その執行を受け、その後同月二八日八日市場区検察庁検察官副検事鳥飼保より右被疑事実のほか、同年六月上旬頃から一〇月二日頃までの間前後八回に亘りいずれも姦淫の目的をもつて、八日市場市、匝瑳郡野栄町内七カ所(うち片岡かん方は右被疑事実を加えて三回に及ぶ。)の居宅に侵入し、同年八月下旬から一〇月六日頃までの間前後四回に亘り匝瑳郡野栄町川辺二六一五番地伊藤操雄方外三カ所において、同じく姦淫の目的をもつて、各居宅の雨戸をあけようとしたが家人に発見されたため未遂に終つた旨の公訴事実をもつて起訴され、昭和三二年一月一四日八日市場簡易裁判所において第一回公判期日が開かれ、同期日において、被告人は、所論のように公訴事実を認め、検察官の申請する証拠資料につき全部同意し、裁判所においてその証拠調を済ませたけれども、弁護人五木田隆の申請により情状に関する証人として山崎丑松を次回期日に尋問する旨決定し、その期日を同月二八日午前一〇時と指定告知して開延し、そこで右一月一四日弁護人が被告人の保釈請求をなしたところ、前同飯島裁判官は検察官の意見を聴いた上右保釈請求については、刑事訴訟法第八九条第四号の場合に該当するものと認め、却下の決定をなしたという事実の経過であることを認めることができる。なるほど被告人は、所論のように記録上住所、氏名も判明しているのではあるが、原審における証拠調が全部終了しているわけでなく、次囘期日たる昭和三二年一月二八日午前一〇時には証人尋問が決定されているのであつて、記録に明らかな被告人の性格、前歴、家庭生活情況等諸般の事情を考察し、被告人がいずれも姦淫の目的をもつて、前後九囘に亘り住居侵入をなし、前後四囘に亘り居宅侵入の未遂をなし、その場所が被告人の居住する八日市場市内や、その附近の野栄町内である旨の本件公訴事実の審理に当り、原審が証拠調を全部終了せず、いまだ弁論終結の段階に達しない本件の場合においては、被告人が罪証を隱滅すると疑うに足りる相当な理由があるものということもできるのであつて、この理由をもつて、弁護人の保釈の請求を却下した原決定は相当というべく、その他記録及び所論を検討するも原決定取消の事由となるべき瑕疵を発見しがたいので本件抗告はその理由なきに帰着する。

(工藤 草間 渡辺好)

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